◆みんな“あやや”のことを忘れてるんじゃないか ――最近、各方面で松浦亜弥の魅力が再評価されていますね。 劔樹人(以下:劔):僕の場合はハロプロ時代に大ファンで、数年間アイドル自体から離れていた時期もあったんですが、2012年くらいに突然、雷に打たれたような気持ちになったんです。何かあったわけじゃなくて、ただYouTubeを見ていただけだったんですが。もしかしたら松浦亜弥さんのことをみんな忘れてるんじゃないかと、彼女が帰ってくる場所を作っておかなきゃいけないんじゃないかと感じました。 それで当時、『TV Bros.』でやっていた連載を「男は黙って松浦亜弥」というタイトルに変更して、とにかく松浦亜弥さんを褒めるということをしました。メディアに出る機会があったら、松浦亜弥さんの話ばかりしていたんです。当時まだ26歳という若さの松浦亜弥さんが過去の人みたいになってるのはどうなのかな、という気持ちでしたね。 ――「20代の女性歌手で一番上手い」ということはお感じになられますか? 劔:僕が印象に残っているのは2002年に『FACTORY』というフジテレビの音楽番組に彼女が出演したときですね。その日の出演者はストレイテナー、東京スカパラダイスオーケストラ、DRY&HEAVYだったんですよ。がちがちのロック、スカ、レゲエ層のファンが来てるわけです。 そこにオープニングアクトとして当時15歳の松浦亜弥さんがシークレットで出演して。突然、あややが出てきて、荒井由実さんの『ひこうき雲』と、『LOVE涙色』をアコースティックのアレンジで歌うんです。当然ロック層もみんな彼女の存在は知っているわけですから、登場したときにお客さんたちははしゃぐんですよ。ただ、悪ノリになっていて。 でも、歌がどんどん進んでいくと水を打ったように静かになって、歌っているときにはだれも喋らず、みんなじっとステージを観てるんです。曲が終わって、あややがいつものテンションで「FACTORYへようこそ~♪」って喋り出して、ようやく会場が我に帰るという。 ――ロックのファンも心を打たれたんですね。 劔:人の心にちゃんと響く歌を歌うことは、選ばれた人にしかできないことだし、その才能があるんだなって感じましたね。アイドルに興味の無いロックファンでも納得させられるというか。その力は15歳の頃からありましたね。僕はかなり衝撃を受けました。それが20代になって、さらに歌がうまくなってるんです。 ◆松浦亜弥は「太陽」のような存在 ――ハロプロ卒業以降、どうして活動を控えていたのでしょうか。 劔:まずは病気のことが大きかったんじゃないですかね。子宮内膜症という病気は、いつ具合が悪くなるかわからないと聞きますので、人前でライブをする立場なら不安でスケジュールを決めにくいと思います。それと、本人がやりたい活動と、事務所の方針や世間のイメージがズレていたから、活動したくても思うように動けなかったんじゃないでしょうか。ある時期から音楽性が変わってきたんですよね。 ――音楽性が変わったのは、ハロプロに在籍していた頃からですか? 劔:そうですね。最初のきっかけは、美空ひばりさんが書き遺した詩で作曲された『草原の人』くらいで、それから谷村新司さん作詞・作曲の『風信子(ヒヤシンス)』とか。世の中のライト層や、女の子たちが憧れているあややの姿とはだいぶ違ったと思うんです。 若くしてデビューして、18歳くらいで相当大人っぽかったから、いつまでもアイドルではやっていけないと本人も思っていたとは思いますが、タイミングが早すぎたのか、本当にわずかなところなんでしょうけど、そっちじゃなかった、みたいな感じじゃないでしょうか。 ――劔さんにとって“あやや”はどういう存在だったんですか? 劔:松浦亜弥さんは、昔、僕が落ち込んでいた時代に日々を明るくしてくれたアイドルで、あのとき彼女の存在なくしては今の自分はないので、一方的に恩人のような存在です。 ――たくさんのアイドルがいるなかで、どうして松浦亜弥さんなのでしょうか? 劔:アイドルって、完璧じゃない、どこか欠けてる部分を含めてファンは応援するじゃないですか。でも彼女はデビュー当初から完璧で、むしろモーニング娘。が好きな人たちには、松浦亜弥に興味を持てない人も多くいたんですよ。でも僕は、太陽のような、とにかく浴びてるだけでいいようなところが素晴らしいなと思って。立ち振る舞いも非の打ち所がなく、良くも悪くも「プロのアイドル」なんて呼ばれてましたが、僕にとってはそれが尊敬出来てカッコいいと思う所でしたね。 ――ずばり、“活動再開”についてお聞きしたいです。 劔:それについては、いろいろ思うことがありまして……。 ⇒【後編】「「あやや復活はフジロックで!」。来年は再ブレイクの年」に続く http://joshi-spa.jp/155352 【劔 樹人/Mikito Tsurugi】 1979年生まれ、新潟県出身。男の墓場プロダクション所属。「あらかじめ決められた恋人たちへ」ベーシストであり、「神聖かまってちゃん」「アカシック」「撃鉄」「バンドじゃないもん!」のマネージャーを務める。『高校生のブルース』で漫画家デビュー。初の自伝的コミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』が好評発売中。今年の8月8日には「SPA!」でコラムを連載するエッセイスト・犬山紙子と結婚。ネット番組MC、コラムニスト、俳優など多彩な顔を持つ
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